6/26 0:15 毎日新聞に以下の記事が掲載されています。(以下引用)
労働者派遣のあり方を見直す契機としたい。日雇い派遣最大手のグッドウィルが廃業を決めた。会社と課長ら3人が職業安定法(労働者供給事業の禁止)違反のほう助罪などで略式起訴されたのを受け、厚生労働省から事業許可を取り消されるのを見越しての完全撤退である。
違法な二重派遣などで課長らが逮捕された事件がきっかけだが、グッドウィルはこれまでも、派遣が禁止されている港湾運送や建設業務への違法派遣、派遣労働者の労災隠しなど、各地で違法行為を繰り返してきた。法を守れない企業に厳しい処分が待っているのは当然だ。売り上げ至上主義に走った結果の重大性をグッドウィル・グループ全体で受け止める必要がある。
同社が派遣する1日平均の労働者は現在約7000人。廃業によって路頭に迷う事態を招かないよう、関連会社で受け入れるなどグループとして対策を講じる責務がある。厚労省も救済策に乗り出すべきだ。
しかし、派遣をめぐる問題は、グッドウィルの廃業で事足りるわけではない。派遣労働者が低賃金で、かつ不安定な雇用を強いられている構図を根本的に改めることが急務だ。
ピンハネを容認するとして禁じられてきた労働者供給事業を例外的に認めようと、労働者派遣法が制定されたのが85年。当初は派遣対象を専門業務に限定していたが、99年の法改正で建設業務などを除いて派遣が原則自由化され、03年の改正で製造業への派遣も解禁された。経済界の要望を受けた政府の相次ぐ規制緩和が派遣労働者を一気に増やす結果をもたらした。
中でも原則自由化で、労働者が派遣元会社に登録し仕事があれば雇用契約を結ぶ登録型派遣が広がった。その典型が日雇い派遣だ。派遣先企業は必要な時に必要な人数を確保でき、派遣元は派遣先からマージンを得ることができる。その分、労働者は少ない収入でその日暮らしを迫られ、ワーキングプア(働く貧困層)の温床にもなってきた。
国は、まるで商品のように扱われている派遣労働者を守る方向に政策転換すべきだ。そのためには、派遣の規制緩和から規制強化へとかじを切る必要がある。
法改正で日雇い派遣を禁止するのは当然だが、それだけでなく、99年の改正前に戻して派遣対象を専門業務に限ったり、登録型派遣を禁止して派遣元が労働者を常用雇用する常用型派遣だけを認めたりするなど、抜本的な改正に踏み出してもらいたい。
秋葉原無差別殺傷事件の容疑者が派遣労働者だったことに絡み、舛添要一厚労相は派遣の法令順守徹底と日雇い派遣禁止の法改正を検討する考えを表明した。派遣問題への厚労省の取り組みは後手を踏み、労働者の深刻な実態を放置してきた。労働者の権利を守る姿勢が今こそ問われている。
<この記事のURL>
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20080626k0000m070159000c.html